VTuber二次創作ゲームTAS動画制作
エミュレータを使用してゲームの挙動を制御し、理論上最速タイムでのクリアや最大スコアの獲得を目指すゲームプレイをTAS(Tool-Assisted Speedrun)と呼びます。
ここでは、TAS業界としてはまだ発展途上である、インディーズ系PCゲーム、特にVTuber様を題材にしたTAS動画の制作について検証結果や経験談・教訓などを記載したいと思います。
なお具体的な技術面の話については、TASVideosのサイトをご覧ください。
※著作権や版権の都合が優先されるため、記載されている情報については予告なく変更となる場合がありますので予めご了承ください。
※あと表現ミスったかなーと思う箇所をちょくちょく書き直したり消したりしてます。色々と表現の模索中な点についてはすみませんが大目に見てもらえると嬉しいです。
まずはここから
どんなゲームにおいても共通事項ですが、作品の世界観があり登場人物やゲーム制作者がいて初めてTASさんが存在できるので、私たちはそれらに敬意をもって活動しなければなりません。
またゲーム自体に著作権があります。TAS動画にしようとする際には必ずゲーム制作元の意向やガイドラインを確認しましょう。
二次創作系ゲームであれば元となっているコンテンツの制作会社(制作者)のガイドラインも見て、TAS動画制作が問題ないか確認する必要があります。
特にVTuber様の二次創作系ゲームであれば、元となっているVTuber様の意向も加味する必要があります。相手が事務所所属の場合はガイドラインの確認、個人の場合は事前にお問い合わせするのがベストだと思います。
セットアップ
前項までの確認事項がクリアになったら、セットアップが始まります。
TAS動画制作に関しては、TASVideosというサイトが一元的に指針を出しているので、そちらに従うのが良いかと思います。
ただし、ほとんどのページが英語で書かれているので、英語の勉強をするor翻訳機能を使うなどの対策が必須になります。
特にインディーズゲームなどの情報量が少ないものの場合、コミュニティが英語圏にしかないことがあるため、日常英語だけでなく、英語圏のスラングも覚えておくとコミュニケーションが楽になるかと思います。
(私は英語よくわかんないのと、コミュ障なので独りで翻訳機使ってセットアップしました泣。でも逆に言うと英語ができなくても翻訳機を使えば何とかなるというポジティブな考え方もできるのかもしれませんw)
セットアップ結果について
補足として、私が活動を通して検証した、PCゲームの種類とエミュレーターとのかみ合わせ結果を掲載します。
・2020年代のゲーム開発事情
2020年代に入って、PC用ゲームは64bit版のOS用に作られることが多くなりました。
かの有名なRPGツクールシリーズでも、MV系、MZ系になってからは64bit版のみ対応という形になっています。
これは、IT技術の発展とともにハードウェアの基準が高くなり、相対的に32bit版の需要が少なくなってきたことと、32bit版と64bit版で分けて開発するのがだんだんとしんどくなってきたので、OSの規格を64bit版に合わせていこうという世界的な流れに起因しているようです。(Linuxの世界でもだんだんと32bit環境が手放されつつある状態のようです。)
そのため、VTuberという最近のコンテンツを題材にしたゲームもほぼ64bit版のOSで動作するように作られていることが様々なゲームを調べて分かりました。
・Windows専用ゲームをWindows環境でエミュレートする場合
Windows専用ゲームをエミュレータで動かしたいときは、Hourglassというソフトを使います。
このソフトはWindows XP(ギリギリWindows Vistaも可)で動かすことを前提として設計されているので、当時のPCが必要です。
なので、もし当時のXPやVista時代のPCを持っている人で、TAS動画を作りたい人は、そのPCを再利用することになると思います。(ある意味エコw)
ただ、前述の通り64bitで作られているゲームが多くなっているので、最近のゲームを扱いたい場合、32bitのゲームにしか対応していないHourglassというエミュレータの出番は、ほぼなくなってしまっているというのが現状です。
また、仮に32bitのゲームをエミュレータでプレイしようとしても、Unityのようにプレイ開始直後に解像度選択画面が表示されるとそこでスタックし、進行不能となることがわかりました。
もしやるなら、XPやVista時代に公開されたPCゲームを対象とするのが無難といえます。
・Windows専用ゲームをLinux環境でエミュレートする場合
前項までの課題をふまえ、64bitのWindows専用ゲームをLinuxの世界に持ち込み、Wineというソフトを介して動かすことにしました。
Wineは、Windows専用ソフトをLinuxでも使用できるようにしたいという有志が開発したAPI互換レイヤーというものです。
これを使用することでWindows専用ゲームをLinuxでも遊べるようになります。
ただしWineを介してlibTASというエミュレータでゲームをするときは、Wineの性質上、ステートセーブ・ステートロードができません。
できるのはエンコードと一時停止とコマ送り(フレームアドバンス)だけのようです。
そのため、Windows用ゲームをLinuxで無理やりエミュレーターでプレイするときは、ゲーム進行を極限までスローにして一発撮りすることになります。
私の実力では今のところそれ以外の方法を発見することができていません。
・Linux専用ゲームをLinux環境でエミュレートする場合
Linux用にビルドされたゲームのうち、「GODOTエンジン」と「商用版Unity」のゲームはlibTASというエミュレータを使って動かすことに成功しました。
ただし、GODOTエンジンで作られたゲームはlibTASで動かすと音割れする場合があるようです。
Unityは商用版と無料版があり、商用版はエミュレートできると書きました。
ここでいう商用版とは、主にSteamのような大規模なゲームサイトに出品されている有料のゲームを指します。
無料版とは、個人で小規模なコンテンツを作る場合や、非営利でゲームを作る場合に選べるUnityパッケージです。
無料版のUnityは、ゲーム開始直後に"MADE WITH Unity"と表示される仕様があり、これがエミュレータとぶつかって進行不能を引き起こすことがわかりました。
この冒頭の"MADE WITH Unity"をプレイヤーの側で非表示にすることはできないようなので、無料版UnityをlibTASで動かすのは難しいようです。
・まとめ
全体的にみると、できないことのほうが多く見えるので、ネガティブな評価に聞こえるかもしれません。
ですが、この検証によってエミュレータの改善につながったり、私と同じ検証に時間を使う人が減ればそれだけ相対的にその人の時間が増えるので、ポジティブにとらえてもらえるとありがたいです。
最後に検証結果をフローチャートにした図を掲載しますので参考にしていただけると幸いです。
検証を通して個人的に学びとなったのは、特殊な技術は時代の流れに合わせてアップデートできる人が少ないので、使い続けようとすると時代の流れに取り残されてしまい、だんだんと淘汰されやすくなるということです。
フロッピーディスクがUSBに置き換わるのと同じように、32bit版OSはだんだんと64bit版OSに置き換わり、それに伴い、使えるソフトが変化するといったことが多くなりました。
VTuberの業界も遠い将来いずれそのような転換期が来るのかもしれないと思うと、今の技術でパフォーマンスを発揮し続けることも重要ですが、今後、将来的に使い続けられる技術をどれだけ取り入れられるかどうかにも気を配ることが必要になってくるのかもしれません。
この検証がお役に立てれば幸いです。
まとめ
一番は、そのゲームを楽しんでプレイできることだと思います。
何かの拍子に楽しく取り組めなくなってしまったら、その時はいったん距離を取ってみて、やる気が戻ったらまたチャレンジしてみる感じでいいんじゃないでしょうか。
ゲームに関わっている人たちも、プレイヤーに楽しんでもらうことを一番望んでいると思うので、なによりまず楽しんでゲームをプレイしてみてください。
多分、楽しんで取り組むことで、新しい発見に気づくんだと思うし、出来上がったものにもその気持ちが表れるような気がします。
この「楽しんでやってみる」という感覚でやってみると上手くいきやすいというのが私の最近の感想です。